「不要になった古い機械が100万円で売れた!会社の利益が100万円増えたぞ!」
もし、あなたがそう考えているなら、少し注意が必要です。法人資産の売却は、単純な「売却額=利益」というわけではありません。そこには、「減価償却」という会計上のルールと、避けては通れない「税金」の問題が密接に関わっています。
この会計処理を正しく理解しているかどうかで、手元に残るキャッシュの実額や、その期の法人税額が大きく変わってくることさえあるのです。
この記事では、法人買取サービスを利用する際に、経営者や経理担当者様が必ず知っておくべき「減価償却」と「税金」の基本的な考え方を、具体例を交えながら専門的かつ分かりやすく解説します。
すべての基本!「減価償却」と「帳簿価額」を正しく理解しよう
税金の話に入る前に、すべての基本となる2つの会計用語をマスターしましょう。
減価償却とは?
機械や設備、PC、車両といった高額な固定資産は、時の経過とともにその価値が減少していきます。その価値の減少分を、法律で定められた「耐用年数」に応じて、毎年少しずつ経費として計上していく会計処理。それが「減価償却」です。
帳簿価額(簿価)とは?
これが最も重要なキーワードです。帳簿価額(通称:簿価)とは、「会計上の、その資産の現在の価値」のことを指します。以下の計算式で求められます。
取得価額 – 減価償却累計額 = 帳簿価額(簿価)
例えば、500万円で購入した機械の減価償却が、これまでに合計400万円進んでいたとします。その場合、この機械の現在の「帳簿価額」は100万円となります。この帳簿価額が、資産を売却した際の損益を計算するための基準になります。
【計算例で解説】固定資産を売却したときの損益(売却益・売却損)
では、実際に資産を売却した際に、利益(売却益)や損失(売却損)がどのように計算されるのか、具体的なケースで見ていきましょう。
ケース1:売却価格 > 帳簿価額の場合(=利益が出る)
計算式: 売却価格 – 帳簿価額 = 固定資産売却益
- 具体例:
帳簿価額が100万円の機械を、買取業者に150万円で売却できた。 150万円(売却価格) – 100万円(帳簿価額) = 50万円 この場合、50万円の「固定資産売却益」が発生します。この売却益は、営業利益などと同様に法人税の課税対象となる「益金」に算入されます。
ケース2:売却価格 < 帳簿価額の場合(=損失が出る)
計算式: 帳簿価額 – 売却価格 = 固定資産売却損
- 具体例:
帳簿価額が100万円の機械を、状態が悪く70万円でしか売却できなかった。 100万円(帳簿価額) – 70万円(売却価格) = 30万円 この場合、30万円の「固定資産売却損」が発生します。この売却損は、会計上「損失(費用)」として計上することができます。
ケース3:減価償却が終わり、帳簿価額が「1円」の場合
耐用年数をすべて終え、減価償却が完了した資産は、会計上「備忘価額(びぼうかがく)」として帳簿価額が1円になっています。
- 具体例:
帳簿価額1円の古いパソコンを、買取業者に1万円で売却できた。 1万円(売却価格) – 1円(帳簿価額) = 9,999円 この場合は、9,999円が「固定資産売却益」となります。どんなに古くても、値段がついて売れれば、その売却額のほぼ全額が利益として計上されることになります。
知らないと損!「固定資産売却損」がもたらす節税効果
ここが経営者様にぜひ知っていただきたいポイントです。
ケース2で発生した「固定資産売却損」は、会計上「損失(費用)」として扱われます。これは、法人全体の利益を圧縮する効果を持ちます。
つまり、法人全体の利益が減れば、その利益に対して課される法人税額も結果的に減少するのです。
例えば、本業で1,000万円の利益が出ている期に、古い機械を売却して300万円の「固定資産売却損」を計上できれば、その期の課税所得は700万円に圧縮され、法人税の負担を軽減できます。
価値が下がり、倉庫で眠っているだけの遊休資産を放置せず、適切なタイミングで売却して「売却損」を確定させることは、合法的な節税対策の一つとなり得るのです。
消費税の取り扱いに関する注意点
法人が事業用の資産を売却する行為は、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡」にあたるため、原則として消費税の課税対象となります。買取業者に査定を依頼する際は、提示された買取価格が税抜価格なのか、税込価格なのかを必ず確認しましょう。
【重要】最終的な判断は、必ず顧問税理士にご相談ください
この記事で解説した内容は、あくまで法人資産の売却における一般的な会計・税務処理の考え方です。お客様の企業の状況、資産の種類、採用している会計基準などによって、具体的な処理は異なる場合があります。
個別のケースにおける詳細な会計処理や税務申告については、必ず顧問税理士や会計士などの専門家にご確認・ご相談ください。
まとめ:法人買取は、財務戦略の一環です
法人買取は、単に不要な資産を現金に変えるだけの行為ではありません。それは、企業の会計・税務にも影響を与える、財務戦略の一環と捉えるべきです。
まずは自社の資産の「帳簿価額」を正しく把握し、売却によって「利益」と「損失」のどちらが発生するのかをシミュレーションしてみましょう。特に、含み損を抱えた遊休資産の売却は、キャッシュフローの改善と節税を同時に実現できる、賢い経営判断に繋がります。
弊社では、お客様の経理処理に必要となる契約書や買取明細書といった各種書類も、ご要望に応じて適切にご提供いたします。宮城県での法人資産の売却に関するご相談は、会計・税務の観点も踏まえてサポートできる弊社にぜひお問い合わせください。
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